エレクトロスピニングについて
エレクトロスピニング(電界紡糸)法とは、ポリマーなどを溶かした溶液に高い電圧をかけ、電気の力で細い糸状に噴き出させることで、直径がナノメートル単位の繊維(ナノファイバー)をつくる方法です。
このページのポイント
- ■ しくみ装置は「高圧電源」「溶液のタンク」「紡糸口(ノズル)」「アースしたコレクター」の4つでできています。紡糸口に10〜30kVの電圧をかけ、電気の引力が溶液の表面張力を上回ると、溶液がコレクターに向かって噴き出します。飛んでいく間に溶媒が蒸発し、繊維はナノサイズまで細くなります。
- ■ 使える材料熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、ポリマーブレンド、無機化合物を混ぜた複合材のほか、アルミナや酸化チタンなどのセラミックスもナノファイバーにできます。
- ■ 特長できた繊維の膜は、体積あたりの表面積が従来のマイクロサイズの繊維よりはるかに大きくなります。また、条件を変えることで、表面がなめらかな繊維、ビーズ状、多孔質、一方向にそろった繊維などをつくり分けられます。
- ■ 仕上がりを決める条件「溶液の性質」「紡糸の条件」「まわりの環境」の3つに分けられます。繊維の太さは主にポリマーの濃度で、繊維の向きは主にコレクターの設計で決まります。
エレクトロスピニング法は、多様な材料(主にポリマー) をナノファイバー形状へ紡糸できること、またファイバー形状のコントロールが比較的簡便であることが特長です。
これまでの研究から、工業用熱可塑性ポリマー、生分解性ポリマー、 ポリマーブレンド、そして、無機化合物を混入した複合材のファイバーがエレクトロスピニング法によって紡糸されています(図1)。
ここ数年では、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸ジルコン酸鉛等のセラミックスナノファイバーの作製例が、盛んに報告されております。
通常、エレクトロスピニング法では、溶媒に材料を溶解した溶液を紡糸材料として用います。
エレクトロスピニングの原理


エレクトロスピニングの原理は、図1に示すように、高圧電源、ポリマー溶液・貯蔵タンク、紡糸口、および、アースされたコレクターからなります。
ポリマー溶液はタンクから紡糸口まで一定の速度で押し出されます。
紡糸口では、10~30kV の電圧が印加されており、電気引力がポリマー溶液の表面張力を越える時、ポリマー溶液のジェットがコレクターに向けて噴射されます。この時、ジェット中の溶媒は徐々に揮発し、コレクターに到達する際には、ジェットサイズがナノレベルまで減少します。
ナノファイバー膜の特長

紡糸したファイバーは、図2に示すような膜を形成します。
このときのファイバーの配向は、コレクターに依存します。
ナノファイバー膜は、単位体積あたりの総表面積が従来のマイクロサイズのファイバー膜を、はるかに凌駕することが知られており、この結果、ナノファイバーに化学的または物理的修飾を行うことで新奇的な特性を得られ、様々な分野に応用が期待されています。
ナノファイバーの形状のつくり分け

ビーズ状ナノファイバー

多孔ナノファイバー

シングルナノファイバー

一方向配向ナノファイバー
図3に示すように、同じポリマーを紡糸しても、パラメータの組み合わせをかえることで、平滑表面ファイバー、ビーズ状ファイバーや多孔表面ファイバーといった、異なる形状のファイバーを紡糸することが可能です。
ファイバーの形状に影響するパラメーター
一般的に、エレクトロスピニングに関連するパラメーターは、溶液特性、紡糸条件、紡糸環境条件といった3つのグループに大別することが出来ます(図4)。
・ポリマー濃度
・粘度
・導電性
・弾性
・表面張力
・雰囲気温度
・雰囲気湿度
・大気圧
・印加電圧
・溶液送出量
・噴出口、コレクタ間の距離
・コレクタによる巻取り速度
これらのパラメーターを、どう組み合わせるかといった点がノウハウになってきます。
希望の形態のファイバーを紡糸するための最適紡糸条件を見つけだすことが、エレクトロスピニング法において一番難しい点であり、非常に長い時間を必要とします。
これまでは、どのパラメーターがどのようにファイバーの形態に影響するのかといったことを解明するために、多くの時間が費やされてきましたが、現在ではその傾向はある程度明確になっています。
例えば、ポリマーファイバー径をコントロールするには、当然の事ながら紡糸溶液のポリマー濃度が最も重要なパラメーターとなります。また、ファイバーの配向性をコントロールするには、コレクターの設計が重要になってきます。
一例として、ディスクコレクターにより作製した配向性サンプルを図5に示します。

このように、ファイバー径、表面形状、配向性等、制御したい対象によって、コントロールすべき重要なパラメーターがあります。