
研究員のつむぎです。
今回は、iPS細胞由来心筋細胞の成熟化に向けたPLGAナノファイバーの利用について調べました!
研究員:つむぎ
MECCのナノファイバー部門に所属して2年目の研究員。
趣味:科学雑誌や最新の研究論文を読むこと、空手
特技:中国語
【背景と目的】
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の高純度心筋細胞(CM)を用いた細胞療法は、心臓再生のための有望な手段であり、現在は無血清条件下で堅牢な心筋細胞(hPSC-CM)を効率的に生産することが可能になっています。しかし、2D培養で得られたhPSC-CMは未熟なCMと類似しており、hPSC-CMの機能性と薬物応答性に影響を及ぼす可能性があります。 そこで、この研究では自然環境を模倣するために配向したPLGAナノファイバー上にhPSCM由来CMを整列させたものを利用することで、心筋と同様の形態学的特性を持つ組織構造を生成しました。
【PLGA配向ナノファイバー】
乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)は生分解性・生体適合性が高く、食品医薬品局(FDA)にも承認されている共重合体であり、医療分野で多く利用されています。
PLGA配向ナノファイバー(ANF)はランダム配列のPLGAナノファイバー(RNF)と比較すると、天然細胞外マトリックスに類似しているため、iPS細胞由来細胞増殖および組織形成のための培養足場として使用されました。 足場として使用されたPLGA配向ナノファイバーの繊維径は500~2000nm、厚みは1.5~12μmで、筋肉組織のコラーゲン繊維束を模倣して作製されました。従来の方法のものよりもナノファイバーシートの厚みを薄くすることでCMが浸透しやすくなっています。
【実験】
PLGAナノファイバーとポリジメチルシロキサンを用いて作製した基盤上でiPS細胞由来のCMを14日間培養し観察を行うと、CMがナノファイバーに浸透しナノファイバーを包み込みました。またANF上のCMでは組織が成熟していました。様々な高密度CMを得られることもでき、細胞数を増やしたり複数のCMシートを重ねることで組織の厚さを増やせる可能性があります。
【実験】
PLGAナノファイバーとポリジメチルシロキサンを用いて作製した基盤上でiPS細胞由来のCMを14日間培養し観察を行うと、CMがナノファイバーに浸透しナノファイバーを包み込みました。またANF上のCMでは組織が成熟していました。様々な高密度CMを得られることもでき、細胞数を増やしたり複数のCMシートを重ねることで組織の厚さを増やせる可能性があります。
ANF 上の CM シートは、高度に定義された3次元異方性構造が示す生体内配置を再現したため 3D cardiac tissue-like constructs (CTLC) と命名されました。
高密度ANF(H-ANF)、低密度ANF(L-ANF)、RNF、およびフラット上で培養したCMの電気的特性を比較したところ、ANFおよびRNF上で成長したものは電界電位の振幅が大きく、細胞への接着が良好であることを示しました。H-ANFでは微小電極アレイのT波検出チャネル比率が高くCMに対する慢性的な薬物効果をテストするために重要な、CTLCの長期モニタリングが実証されました。
CTLCの電気生理学的特性に対する薬物耐性を評価するために、E4031を適用しQT 間隔期間を観察しました。ナノファイバー上で培養されたCMはQT間隔の変動性が低く、不整脈活動がそれほど顕著でなかったため、フラット上で培養したCMよりも電気生理学的均一性が高いことが示唆されました。また、薬物を添加して反応を分析したところ、薬物反応が見られました。これらの結果はCTLCが心臓組織のin vivo構造的及び機能的特性を忠実に再現していることを示しており、薬物心毒性試験のモデルとして優れています。
In vitro生着実験では3日間一緒に生着した2つのCTLCを調べると、2サンプル間に明確な境界がなく、生着した組織が単一CTLC層よりも2倍厚くなっており、組織の急速な統合が示されました。さらに、で分離された2つの独立して拍動する宿主CMシート上に配置されたCTLCは、収縮を同期させることができました。これらの結果から、CTLCが
宿主CMと統合し、心臓内の切断された領域間の迅速な電気的結合の確率に役立つ可能性があることを示しており、リエントリー性不整脈を治癒できる可能性を示唆しています。
CTLC移植のパラメーターを分析し、最適化したものをラットの心室心外膜に移植したところ、組織学的ギャップは見られませんでした。ラットの心臓で移植されたヒトTnT陽性CMの厚いクラスターが観察され、一部のhTnT陽性細胞はラットの心室心外膜に湿潤していました。さらに、移植されたCTLC移植片内では、CMの整列と組織化されたコンパクトな肉質構造が観察された。これらの結果は、CTLC の効率的な移植と、移植後 14 日間のiPS細胞由来CM の生存を示しています。
さらに、心筋梗塞のラット12匹の心臓にCTLCを移植し、対照に心筋梗塞のラット17匹に無細胞ナノファイバー足場を移植しました。移植されたCTLCは移植後4週目にはラットの心臓表面で確認できましたが、無細胞ナノファイバーの足場はほとんど確認できませんでした。 また、小血管についても調べてみたところ小型血管密度は対照群よりもCTLC群の方が高かったです。0 週目のベースライン駆出率は 2 つのグループ間で有意な差はありませんでしたが、移植後4週目にCTLCで治療したラットで駆出率の増加が見られました。
【結論】
CLTCは汎用性が高く、操作性も便利であるため、薬物評価と移植のどちらにも適用できます。
薬物評価において、CTLCは生体外組織ベースの薬物スクリーニングの有望なモデルを提供することができ、適用した薬剤に対して優れた反応を示すことから、正確かつ堅牢なモデルであることが証明されました。
CTLCを生着に用いた場合、優れた操作性を示すとともに、切断あるいは瘢痕化した組織ブロックにおいて、迅速なカップリングとリエントリー性不整脈の抑制を可能にしました。
また、ラットを用いたin vivo実験では、心筋梗塞のラットへの移植結果から心筋梗塞の治療に利用できる可能性を実証しました。 全体として、CTLCは、薬物検査や再生心臓治療など、細胞ベースのアプリケーションにおける将来の使用に大きな可能性を秘めています。
【感想】
かなり薄い膜のナノファイバーですが、丈夫でかつ弾性のあるものが作製されていて興味深かったです。 論文内に動画も掲載されていたのですが、時間経過につれて一体化していくのが目に見えてわかりおもしろかったです。

治療や実験の幅が更に広がることになり、さらなる医療の発展に貢献されそうですね!
弊社でも、実際にPLGA配向膜ナノファイバーシートを作製してみました。
弾性はあまり出ませんでしたが、薄くて丈夫なナノファイバーシートを作製することができました。

弾性はあまり出ませんでしたが、
薄くて丈夫なナノファイバーシートを
作製することができました。
光沢があり、綺麗にできました☻

弊社では、様々なナノファイバーサンプルを作製しております。
試したい材料や紡糸に関する質問があれば、お気軽にご連絡ください。
【参考文献】
Junjun Li et al.(2017)
Human Pluripotent Stem Cell-Derived Cardiac Tissue-like Constructs for Repairing the Infarcted Myocardium. Stem Cell Reports(https://www.cell.com/stem-cell-reports/fulltext/S2213-6711(17)30414-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS2213671117304149%3Fshowall%3Dtrue)